
蜜柑
読書灯の下で、その二行に指が止まった。
「わたしはミカンの尻に親指を入れた。
ぷん と甘酸っぱい匂いがした。」
剥かれた果皮から飛び散る飛沫まで見えるような生々しさに、胸がどきりと跳ねる。
逃げるように自分の書き散らした詩を読み返したが、そこに広がっていたのは、あまりにも安全で平坦な景色だった。
自分の凡庸さが、ひどく惨めに思えてくる。
心の淵が、言葉にならない焦燥感で粟立つ。
このまま夜に溶けてしまうわけにはいかない。
もっと生々しく
もっと美しい言い回しを求めて、私は今夜、新しい歌に指先を浸す。
